• 金庫の暗証番号を書いた紙を失くした

    「鳴くよウグイス平安京(794年)」、「いい国作ろう鎌倉幕府(1192年)」、「以後よく広まるキリスト教(1549年)」なんて必死で覚えたあの頃が懐かしい。数字のままだとちっとも覚えられないのに、こうして語呂合わせにすると簡単に覚えることができるから不思議だ。こうやって語呂合わせで数字を覚えたのは歴史の年号だけに限ったことではない。友達の電話番号もそうだった。あの頃はまだ携帯電話もなく、友達との連絡手段は家電のみだったから、いつも遊ぶ友達の番号は語呂合わせで覚えていたものだ。1126(いい風呂)とか、8802(母鬼)とかいうわかりやすいものから、2526(二個二浪)とか、1920(一句に輪)と言った、少々苦しいものまで、あの頃は知恵を絞って色々と考えていたものである。

    今ではすっかりスマホやガラケーが浸透し、そこに電話帳という便利な機能が備わっているので、いちいち誰かの番号を語呂合わせで暗記することなどなくなってしまった。自分の番号でさえ覚えてないということもよくある話だ。数字の語呂合わせはもはや歴史の年号だけの話になっている今日この頃である。

    もし電話番号語呂合わせの時代のまっただ中であれば、私はきっと金庫の暗誦番号だって、自然と語呂合わせの文字を考えて覚えていたはずだ。だけど最近ではすっかり語呂合わせをする必要も習慣もなくなっていたため、私は金庫の暗誦番号を覚えていなかった。

    そんな中で、私は金庫の暗誦番号を書いた紙を失くしてしまったのだ。めったに開けない金庫だったし、最後に開けたのもいつだったか記憶にないくらいである。中に入っているパスポートを取り出したいのだけど、どうしてもその暗誦番号を思い出すことができない。一度でもその番号で語呂合わせをしていれば、きっと忘れなかっただろうに…と思うと悔やまれてならない。私は泣く泣く、鍵屋に電話をしたのだった。

    Categories: 金庫