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僕のDNA鑑定結果が頑丈な金庫にしまわれていることについて
僕は名前を言えば多くの人が知っているであろう、有名菓子店の跡取り息子です。幼稚舎から慶應に入れてもらい、このまま大学まで、それ程苦労なく上にあがれるでしょう。それでも慶應は学業不振者への対応は厳しく、ダメな人は容赦なく留年させますけど、僕は家庭教師もつけていますから、学内の成績はそれなりに取れています。大学まで無事に進めたら、有名菓子メーカーのアルバイトを始め、大学卒業後は5年くらい、その菓子メーカーに勤めます。社会勉強と言うやつです。慶應はOBとのつながりも深いですから、もう社会勉強先のあてもついています。勉強が終わったら、自分の家に戻り、跡を継ぐのです。
でも、僕のDNA鑑定結果が頑丈な金庫にしまわれていることについて、知っているのは僕とおじいちゃんと母だけです。うちの家に婿として入ってきた父親は、このことは知らないそうです。金庫の中の重要な書類。それが何を意味するのか、僕にはわかりませんが、僕が父とあまり似ていないことと、何か関係があるのかもしれません。
それでも僕は、父が大好きです。気が強く口やかましい母親より、いつもおっとり、にこやかに接してくれる父の方が、人として尊敬できるし信用できる気がします。件の金庫も、婿である自分は触れないが、その中に何かすごいものが入っている。もしかしたら金の延べ棒が入っているかもと、目をキラキラさせていたずらっぽく笑う父に、幸せな人だなと、僕までほっこりします。
お店にも金庫はありますが、祖父の部屋にある金庫は本当に大きく頑丈です。父が居る時は絶対に開けられない金庫ですが、僕は何度も中を見ています。外側の大きさの割に中はそれ程大きくなく、金の延べ棒なんて素敵な物は存在せず、書類や証券の類で、現金すら見かけません。だけどその金庫を、父のためにも、祖父や母がどうにかなった時には、僕がしっかり守り管理しようと思っています。
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